『天使の梯子』・本
天使の梯子 村上由佳 集英社 (2004年10月)
284ページ
自分の恋人を姉に取られ、その恨みをぶつけた直後に姉を亡くしてしまった夏姫。あれから10年経った今でも、姉にぶつけたその最後の言葉を後悔し、悲しみから抜け出せないでいた。そんな夏姫の前に、まだ自分が高校で教師をしていた頃の生徒、慎一が現れる。夏姫は慎一に惹かれ、図らずも10年前の姉とかつての恋人・歩太と同じ関係になる。夏姫は年下の彼を持つコトによって、10年前に姉が感じていた気持ちを知り…。
『天使の卵』を読んだ時にも感じたのだけれど、今作もやっぱり
読んでいる最中にキラキラとしたまぶしさを感じた。情景の表現が美しい。
でも、『天使の卵』は結末が悲しかったのに対して
『天使の梯子』は始まりを予感させる終わり方で、希望が持てるから
私はこっちの方が好き!それにちょっと心に引っかかる言葉もあった。
「自分が訊かれて困ることは、人にも突っこまないんだよ」
と慎一が言ったコトに対して夏姫が言った言葉。
「そんなの、友達って呼べるのかな。 …省略…
そうやって突っこんで話すことをためらってばかりじゃ、
ほんとの人間関係なんて築けないじゃない。 …省略… 」
思わずドキッとしてしまった。私にも心当たりがあるわ…。
もっと突っこんでいろんなコトを知りたいと思うような好きな相手に限って、嫌われたくないからとか、引かれたくないからとか考えて、ちょっとでも表情が曇るのを目にしてしまうと逆に突っこめなくなってしまう。本当はそういう弱いところとか心の奥深い部分を知って初めて絆を深められるのに。子供の時には何にも考えずに簡単にできていたそんなコトが、いつの間にか家族にさえできなくなっている。そんな私は慎一に似てとても臆病者なんだと思う。
慎一は夏姫の前でずっと心の奥底に秘めていた寂しさを発散させ
夏姫も10年間心にしまい込んでいた悲しみを慎一の前で爆発させた。
こういう関係になるまでにはとても勇気がいると思うんだけど
乗り越えた二人の関係が新しく始まりそうなラストは感動的で
強い信頼関係を築けた二人をすごく羨ましく思った。
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